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こぐまちゃんえほん しろくまちゃんのほっとけーき

こぐまちゃんは、ずっと愛される絵本

「こぐまちゃん」は、絵本作家のわかやまけん先生が描いた、子ども向け絵本です。1970年の最初の作品から人気を博し、1977年まで15冊が出版されています。累計で1,000万部を超えるロングセラーの名作です。

こぐまちゃんが作られてから、50年以上の時間がたっていますが、少しも古さを感じさせません。ぼくが初めて手に取った時、てっきり若い作家さんの作品だと思いこんでいたほどです。

こぐまちゃんは2歳の子どもです。お父さん、お母さんと暮らしています。そして近所にはお友達のしろくまちゃんがいます。子どものあどけない姿と成長、やさしく見守る愛情は、いつの時代でも変わらないものです。

もり ひさし (著), わだ よしおみ (著), わかやま けん (イラスト), こぐま社

こぐまちゃんは、どうしてこんなに子どもと親のハートをつかむの?

「こぐまちゃん」の絵本は、「幼い子が最初に出会う本」というコンセプトで作られました。

描かれているのは、顔を洗ったり、おトイレしたり、お手伝いをしたり、泥んこ遊びをしたり、時には失敗をして泣いたりする幼い子どもの日常生活です。

当時、作者のわかやま先生のお子さんも2歳だったこともあって、描かれているこぐまちゃんの姿は、愛情をもって見つめる2歳の子どもの日常そのもの。

本を開けば、同じ年のお友達がいるような気持ちにさせてくれます。だから子どもたちが、こぐまちゃんを大好きになるのです。

色褪せない人気の秘密

こぐまちゃんえほん こぐまちゃんのうんてんしゅ

厳選された色

こぐまちゃんの絵本で使われている色には、2つの特徴があります。

一つは、巧みな色の構成です。日本の風景にあるような色で構成したいという意図から、こぐまちゃん絵本では、オレンジや緑、グレーなどの中間的な色に、青や黄色、黒を加えた6色が使われています。

赤やピンクのような色で目を引くのではなく、どこか抑制が効いた穏やかな色遣いは、こうした考え方に基づいています。

そしてもう一つは、印刷方法です。一般的な出版物は、オフセット印刷と呼ばれる、赤青黄と黒の4色の細かい点で色を作ります。どんな色も簡単に作ることができる便利な方法ですが、4色だけで表現するため、色の鮮やかさには限界があります。

そこで、こぐまちゃん絵本では、あえて6色分の原画を描くという手間をかけて、鮮やかな色を作る特別な印刷手法を使っています。

1色ずつの絵を描き、それを重ねていくという手法が、一般的な印刷よりも手間がかかることは、左にあるリトグラフの制作過程動画を見るとよくわかります。
(こぐまちゃんは手作業ではないですが、通常の印刷より手間がかかります)

そしてもう一つは、印刷方法です。一般的な出版物は、オフセット印刷と呼ばれる、赤青黄と黒の4色の細かい点で色を作ります。どんな色も簡単に作ることができる便利な方法ですが、4色だけで表現するため、色の鮮やかさには限界があります。

そこで、こぐまちゃん絵本では、あえて6色分の原画を描くという手間をかけて、鮮やかな色を作る特別な印刷手法を使っています。

1色ずつの絵を描き、それを重ねていくという手法が、一般的な印刷よりも手間がかかることは、左にあるリトグラフの制作過程動画を見るとよくわかります。
(こぐまちゃんは手作業ではないですが、通常の印刷より手間がかかります)

もり ひさし (著), わだ よしおみ (著), わかやま けん (イラスト), こぐま社

こぐまちゃんえほん こぐまちゃんとどうぶつえん

愛すべき形

こぐまちゃんは、子どもが最初に出会う絵本というコンセプトで作られました。
2歳くらいの子どもの最初のお友だちとして、くまのぬいぐるみを主人公にすることが構想されました。

2歳児というと、自分と他人の境界線があいまいな時期です。ぬいぐるみは自分の分身のような存在であり、一緒に遊んでくれる存在でもあります。子どもが愛着を感じられるように、手描きの丸、四角、三角などの単純な図形を組み合わせて描かれています。

そして、こぐまちゃんの着ている服はポンチョです。 時代の流行に左右されない、かわいい姿になっています。

もり ひさし (著), わだ よしおみ (著), わかやま けん (イラスト), こぐま社

こぐまちゃんえほん こぐまちゃん ありがとう

美しい言葉

こぐまちゃんの絵本の言葉は、短い単語で構成され、心地よいリズムがあります。どんどん言葉を吸収する子どもたちにとって、こぐまちゃんに出てくる言葉は、口ずさみやすくて覚えやすいものばかり。

こぐまちゃんの制作には、わかやまけんさんだけでなく、総勢4人が関わっています。そのなかには、もりひさしさんという歌人がいらっしゃり、美しい言葉の響きにこだわって制作されました。

お父さん、お母さんたちに読まれたこぐまちゃんの言葉は、子どもたちの記憶にしっかりと刻まれることでしょう。

もり ひさし (著), わだ よしおみ (著), わかやま けん (イラスト), こぐま社

こぐまちゃんの生みの親

わかやまけん先生


プロフィール
若山憲(わかやまけん)1930年生まれ、岐阜県出身 岐阜県でグラフィックデザイナーとして仕事をする傍らで、少年の頃に出会った雑誌の童画に強く惹かれ、紙芝居や教科書の挿絵などを手掛けた後に絵本作家として活動。代表作に「こぐまちゃんえほん」、「きつねやまのよめいり」など。2015年に85歳で逝去。


わかやまけん先生の原点は、終戦後の名古屋駅の構内で出会った1冊の雑誌「週刊少国民」でした。戦後の色のない世界が広がる中、光に満ちた絵に感銘を受けます。わかやま先生は童画家になる夢を持ち、グラフィック・デザイナーとしての活動を開始します。文章に絵を添える挿絵、そして逆に絵が主体となる紙芝居の作成を通じて経験を積み、1967年には自身初の絵本となる『きつねやまのよめいり』をこぐま社から出版します。この『きつねやまのよめいり』での淡い色彩を評価したこぐま社の佐藤秀和氏が依頼した仕事が『こぐまちゃんえほん』でした。


当初、動かないぬいぐるみが主人公というコンセプトに抵抗があったといいます。しかし、佐藤氏が幼い子どもたちにとってぬいぐるみは最初の友達だから、ぬいぐるみを動かしてほしいと説明し、わかやま先生は『こぐまちゃん』をデザインしました。


わかやま先生だけじゃない!チームこぐま


わかやま先生は、こぐまちゃんの生みの親。
こぐまちゃんをデザインし、姿形を与えたのはわかやま先生です。
こぐまちゃん絵本には、育ての親もいます。
もりひさし先生、わだよしおみ先生、佐藤秀和氏の3人のことです。

テーマとことばを担当したもり先生、ドラマ展開を担当したわだ先生、そして編集者である佐藤氏の3人とわかやま先生を合わせた4人による集団制作によって『こぐまちゃんえほん』はつくられました。当時集団での制作はめずらしいことでした。

制作過程において4人は各々の役割に縛られることなく、ちゃぶ台に広げられたわかやま先生のラフスケッチを囲むようにして意見を交わしながら絵本制作を行っていたようです。絵や展開、ことばの細かいところまでこだわって話し合いを行い、何度も作り直しを行った末に『こぐまちゃんえほん』は生まれました。

絵本にわかやま先生のクレジットしかないのは、デザインをスッキリさせるため。4人で話したうえでわかやま先生の名前を載せることになりました。

「子どもが最初に出会う絵本」を目指して『こぐまちゃんえほん』をつくるにあたって、制作に携わった人たちは物語に絵をつけるのではなく、はじめから「絵で考える」という制作方法をとりました。

文字の読めない2歳くらいの子どもたちがわかる、「考えさせる絵本」よりも「感じさせる絵本」を重視した絵本制作を行ったことで、子どもたちが絵本の中のこぐまちゃんと同じように泣いたり笑ったりしながら実際に体験するように入っていける世界をつくりだしたのです。

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